かつてなぜ栗山英樹は大谷翔平に「手紙」を送ったのか? そこに隠されたメッセージ
『「最高のチーム」の作り方』を上梓した栗山英樹監督、その哲学に迫る!
■選手と交わしたたったひとつの約束
正直、監督がひとりの選手に宛てた手紙を新聞に寄せるのはどうかと少しためらったが、依頼に応えたのには、僕なりの狙いがあった。
大谷翔平という選手の姿をとおして、このチームが一番大切にしてきたものを、改めてみんなに確認しておきたかったのだ。
4年前の日本シリーズのとき、まだいまのような立場にはなかった若い中島卓也や西川遥輝を試合に使ったが、そこで彼らにはあることをお願いした。
「とにかく最後まで全力疾走してくれ」
それは彼らとの、たったひとつの約束でもあった。
「それさえ続けてくれれば、これからも絶対に使い続ける。だからどんな一流選手になっても、それだけはやめないでくれ。それが野球のすべてなんだ」と。
彼らはいまも、その約束を守ってくれている。
もちろん同じことは大谷にも伝えていて、ただ彼の場合、自分がピッチャーとして出場していてもつねに全力で走るから、よりその姿は印象に残りやすい。
だからこそ、あの手紙でそれに触れることによって、「来年からも変わらず、これだけはやっていくよ」というメッセージを、チームのみんなに伝えたつもりだ。
というわけで、あの手紙は大谷個人に向けて書いたつもりはなく、彼の姿を通じてチームのみんなにメッセージを伝えようとした、それが依頼に応えた真相だ。
ただ手紙の文面には「まだまだありがとうとは言いません」と書いたが、その姿を最後まで見せてくれたことには本当に感謝している。
(『「最高のチーム」の作り方』より抜粋)
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